大槻拓矢は風景や物の写生、古画の模写を行い、そこから得た形を柔らかな色彩で画面に配置し、空間を作り上げています。形を書き写したり、転写した線をなぞったりと、模倣する行為を繰り返す過程で、それぞれの事物の詳細な情報は削られ、簡素化された記号のような図像として画面に配されます。そうして配された図像は絵画内の空間を規定するとともに、図像自体もまた、空間や、並置される他の図像からの影響によって変質していきます。

大槻は、そうした相互作用から生じる、平面上にしか存在し得ないような、どこか隙のある空間の制作を通して、絵画における図像と空間の関係性について考察しています。

 

大槻拓矢は1989年に奈良県に生まれ、2020年に京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画を修了し、現在は大阪を拠点に活動しています。

2019年にシェル美術賞学生特別賞を受賞したほか、国内の美術賞に入選しています。主な展覧会に2021年「京芸 transmit program 2021」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都)、2022年「POP UP @KCUA」(堀川新文化ビルヂング、京都) などがあります。

また、個人で作家活動を行う傍ら、2015年に同じく作家である岡本秀、北浦雄大とバンド「棒立ち」を結成し、実験的なライブパフォーマンスや展示を行っています。主な発表に2021年「棒立ちのエンディングライブ」(京都市立芸術大学ギ ャラリー@KCUA、京都、オンライン)、2019年「棒立ちのライブツアー」(米原市醒井宿資料館、滋賀) などがあります。