高橋知裕は、ぬいぐるみ等の子供向け玩具を主なモチーフとしたコラージュ技法を思わせる絵画作品を制作しています。主題のぬいぐるみや、紙とテープで切り貼りしたかのように見える背景は、あたかもそこに実在するかのように写実的かつ物理的な立体感をもって忠実に描かれる一方、それとは対照的に脱力感に溢れた子供の落書きのような線描や、平面的な印象を与える色使いも併置された画面構成となっています。それぞれに異なる要素の均衡が保たれるように描かれることにより、画面の中のぬいぐるみがより生き生きと命が宿ったような独特な印象を放ちます。
モチーフとして度々登場する生物を模した形をした「ぬいぐるみ」は、生命を持たず言葉を発さないがゆえに、却って豊かな包容力で自分自身を見守ってくれる大切な家族や友達のような存在だと高橋は言います。作品を描くことを通してモチーフであるぬいぐるみと対話し、画面の中に理想像を描くことで、鑑賞者にとってもまた心に寄り添う作品を描くことを追求しています。
高橋知裕は1996年大分県生まれ。
2021年に京都芸術大学大学院修士課程美術工芸領域油画分野を修了し、現在は京都を拠点に活動しています。